遺書と遺言書、1字違いの大きな違い
遺書と遺言書って何が違うの?って思われる方、結構いらっしゃるかもしれません。とてもよく似ているこの2つには決定的な違いがあるのです。それは法的効力があるかないかということです。
遺書には、法的効力がありません。ですので、自分の遺したい思いを自由に形式にとらわれずに書くことができます。そして、そこに書いてあることをその通りに守る必要もありません。一方、遺言書は法律で決められた形式に則って書かなければその効力を発生させることができませんし、そこに書いてあることを守らなければなりません。つまり、
夫が「妻に全財産を遺す」
と遺書に書いても、実際にはその通りにならないこともありますが、遺言書という形で正しく書いておけばその思いを実現させることが可能になるのです。
また、遺書というのは多くの場合、差し迫った死を前提として自分の思いを家族や友人などに遺すものです。たとえば、不幸にも遭難事故にあった方が、自分がもう助からないと思ってノートの切れ端に家族へのメッセージを書いたり、余命宣告をされた方がその自分の気持ちを手紙に託すと言った場合です。ですので、遺書というと何となく死という言葉が連想されて、良いイメージを持たない方も多いと思います。そして、遺書と遺言書を混同されて、遺言書を書くことを敬遠される方も多くいらっしゃるかもしれません。
遺言書を書くということは、ご自身の築き上げた財産を遺された方にどのように分配するかを書き残しておくことです。ですから、死の間際に書くというよりも十分に時間のあるうちに、よく考えて書くことができるものなのです。また、遺言書があれば遺産分割協議をする必要がないため、相続争いを避けるという効果もあります。
こんなふうに書くと、遺言書というのは形式ばった単なる書類のようですが、遺言書には付言事項という法的効力は持たない文章を付け加えることができます。ここでは、遺言書を書いた動機ですとか、ご自身の感謝の気持ちを記すことができますので、財産的なことだけではなくご自身の大切な思いを遺言書に託すことも可能なのです。